弊社代表・舞田竜宣によるコラムです。
ITとAIは、新たな産業革命を引き起こしている。産業革命は、世の中の主役となる人材を変える。19世紀まで主役であった肉体労働者は、20世紀には知識労働者にその座を奪われた。だが21世紀の産業革命では、その知識労働者が主役から降ろされようとしている。
かつて「生き字引」と呼ばれた社員の価値は、検索エンジンで下がり、生成AIでとどめを刺された。またロジカルシンキングも、いまやAIが数秒で、平均的なビジネスパーソンよりうまくこなす。つまり記憶力や論理的思考力は、無くては困るがさほどの価値はなくなったのだ。
では、これからの時代には何が求められるのか。それは発想力だ。ITもAIも、本質は「既にあるもの」を扱う仕組みだからである。生成AIは人類の知恵の平均値を高速で示す装置だが、平均値から跳躍は生まれない。「まだ誰も見たことのないもの」は、学習データの中には無いのだ。
更にこれからは発想力の価値が増してゆく。それを実現するための壁がテクノロジーにより消えつつあるからだ。かつてはアイデアがあっても専門知識や資金がなければ形にならなかった。だがAIとITは、そうした障壁を限りなく低くし、発想力さえあればビッグビジネスをつくることが可能な時代が来ている。
だから21世紀の主役は「発想労働者」なのだ。
では、発想労働者の要件は何か。第一に、常識を疑い、問いを立てること。答えを出すのはAIの仕事であり、人間の仕事は何を問うべきかを決めることだ。第二に、飛躍すること。論理は既知のものの関係を明らかにするが、無関係だったものの間に全く新しい関係を発明することが重要だ。第三に、面白がること。奇抜な発想に対して「前例がない」ではなく「それは面白い」と反応する。損得よりもまず面白いかどうかが、世界を変える力を生む。第四に、やってみること。多くの人がここで脱落する。第五に、冷静に振り返り、更なる問いへ進むこと。この循環が発想力を鍛える。加えて、第六に、寝ても覚めても考え続けるこだわる力と、第七に、理屈ではなく物語で人を巻き込む力が要る。
発想労働者は、ホワイトカラーからしか生まれないわけではない。現場で働くブルーカラーも、自ら発想し面白がって試す人は、発想労働者である。日本には、いま発想労働者が何人いるのか。この新しい人材ポートフォリオが、これからの日本の競争力を決める。



